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共同先端生命医科学専攻とは Cooperative Major in Advanced Biomedical Sciences

専攻長あいさつ

梅津光生早稲田大学と東京女子医科大学は、すでに50年にわたり、人工臓器、医用材料、医療計測の分野での共同研究を進めてきました。そしてその連携をさらに拡大・強化・展開する場所として、2008年春に、両校の連携施設「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設」(通称 TWIns(ツインズ))を、東京女子医科大学隣接地に開設しました。異分野の研究者同士が自由に交流できる環境こそが真の医・理・工融合研究が展開出来る環境になる、というコンセプトに基づき建物がデザインされました。2つの学校法人が1つの施設内に同居する例は稀でありますが、両大学のトップによる連携協議会が組織されて、“壁を低く”をモットーに新しい運営が始まり、現在、早稲田大学から約400名、東京女子医科大学から約150名が入居し、すでにいくつかの研究成果が出始めています。一方で、この連携施設をフルに活用した教育環境の整備を、両大学の連携協議会の中の大学院教育部会で具体化する議論をしてまいりました。折しも文部科学省の大学院設置基準の改正に伴い、2010年春から共同大学院の設立が可能になることを受けて、TWInsに於いて、小さくても象徴的なものを作ろうと言うことで、共同先端生命医科学専攻(博士後期課程)の申請を2009年6月に致しました。その結果、2009年8月末に、わが国で初となる共同専攻の申請が受理されました。

私自身の経験で恐縮ですが、今までに、国立循環器病研究センターのメンバーとして、あるいは早稲田と女子医大との共同研究のメンバーとして、2つの臨床用人工心臓の開発に携わってきました。そこでは、なすすべもなく亡くなっていく重症心不全の患者様に対し、新しい技術に基づく新治療法の提案をしても、有効性や安全性を説明する手法がはっきりしていないために臨床導入が遅れ、欧米に先を越されてしまうという現実を多く目の当りにしてきました。また、製造する企業も、患者様の命と直接関連する分野に対して、大きなリスクを背負い込むことに消極的になりがちで、せっかくの世界初の技術も結局は実用化されずに終わってしまう、という場面も多くありました。家電や自動車などが世界でも一流の技術を有し、世界をリードしているように、創薬や医療機器を開発する企業も、グローバルな視点で開発に取り組み、そしてその成果がいち早く世界に発信されるべく、評価・審査体制を整えることが喫緊の課題であり、この共同大学院ではそのための人材育成を実施したいと考えています。そこでは、新技術を先端医療として定着させるための有効性や安全性の科学的実証法の提唱や、製品が患者様の治療に導入された後の諸課題の抽出と次世代医療へのフィードバックの実践的挑戦を行なうわけですが、そのプロセスを体得するために、医療レギュラトリーサイエンスの概念の確立と、その実践教育が不可欠と考えております。医療産業が、わが国の基幹産業の1つとなるきっかけが、このような新教育組織からできるように、教員一丸となって取り組む決意でありますので、ご理解とご協力をお願い致します。

初代専攻長 梅津光生

共同専攻設置の背景

東京女子医科大学と早稲田大学は、医学と理工学の学際領域において、50年間にわたって医理工連携の実践的経験を積んできました。2000年に両大学は、学術交流協定を締結し、2001年に東京女子医科大学は「先端生命医科学系専攻」を、早稲田大学は「生命理工学専攻」を同時に立ち上げました。2004年には、文部科学省科学技術振興調整費のスーパーCOEに早稲田大学の「先端科学と健康医療の融合研究拠点の形成(通称AsMeW)」が採択され、東京女子医科大学の教員も参画することにより生命倫理など、人文社会科学領域の研究者も参加できるフレキシブルな研究システムが整備されました。その後、早稲田大学には、電気・情報の分野に生命系(電気・情報生命専攻)が創設され、2007年の理工学研究科の再編時に生命医科学専攻が先進理工学研究科内に設置されるなど、両大学の医理工連携を推進する本質的な趣旨を一致させる環境が整いました。そして2008年に、「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設(通称 TWIns)」が開設され、医学研究者と理工系研究者が一体となって研究展開を促進できるようになりました。

共同専攻設置の必要性

新しい科学技術を医療に適用することにより患者様や社会への利益と幸福を具現化するために、新技術と人間との調和と関連する諸問題を科学的根拠に基づいて解決しようとする分野を、我々は“医療レギュラトリーサイエンス”と定義しています。しかし本分野は、自然科学と人文社会科学を網羅する極めて学際的な領域であるために、いまだきちんとした学問体系は確立されていません。そのため、21世紀において急速に進歩してきた医学・理工学・薬学などの自然科学と、複雑化かつ多様化する人文社会科学を融合した新たなサイエンスとして、医療レギュラトリーサイエンスを創造することが強く求められています。

従来、医薬品や再生医療、医療機器の承認は、薬学・医学出身者を中心にその審査業務がなされてきました。ところが、日進月歩で発展を続ける先進技術が、医薬品や再生医療、医療機器の開発に急速に導入され始めている現状において、医療レギュラトリーサイエンスとして医学・薬学・理工学の知識とリスク・ベネフィットの評価、または医薬品医療機器等法など、法律や現在の医療ニーズの把握や倫理や経済価値等を考慮した判断基準などを教授する場と機会が必要であり、このような背景から、共同専攻の設置は必要であると考えています。

共同専攻設置の目的

先進医療を支える新しい医薬品や再生医療、医療機器が医療現場に科学的な評価を経て迅速に導入され、徹底したリスク管理の下に医療に貢献するようになるためには、医療レギュラトリーサイエンスを修得した新しい人材を、基礎・開発研究、橋渡し研究・臨床試験、審査や評価などの分野において、社会との連携の下に輩出しなければなりません。本専攻では、自然科学の基礎と人間科学を含む人文社会科学の融合領域である医療レギュラトリーサイエンスの学問体系を確立するとともに、それに立脚して、先端医療機器や医用材料、再生医療、ゲノム医療などの開発と実現において、指導的な役割を担う人材を養成します。

本専攻の具体的なイメージ


上の図に、従来の専攻と本共同専攻との違いをわかりやすく示しました。従来の大学における自然科学系の研究スタイルは、新しい概念の提唱と実験による実証と言えます。そのため、試験管の中や細胞培養系による実験や実験動物を用いる研究が主であり、独創的で波及効果が期待される研究が高く評価されます。

しかし、学術的な研究成果はそのままでは臨床には応用されません。まず、管理された方法で、品質が保証された製品として製造されたものを、臨床を想定したプロトコールに従って動物を用いた前臨床試験で有効性と安全性を確認し、さらに厳格な倫理審査を経て臨床試験が着手されます。医療側としては、この段階でスタートラインにある対象と言えます。従来この段階は、開発企業と国の審査機関が行ってきました。しかし、新しい概念の医療機器や医薬品においては、評価する方法や臨床試験のプロトコール自体も存在していないため、多くの時間と労力が費やされてきました。この段階を、科学的な根拠をもとに系統的に研究し、具体的な方法を提示するための学問がトランスレーショナルリサーチです。そして承認後も、医薬品・医療機器のライフサイクルを通じて、有効性と安全性を確保しなければなりません。新知見や新技術を医療に導入・管理するためのリスク・ベネフィット評価に関する知識と経験の共有を進め、その調整能力を養い、最先端の医理工と生命科学関連領域と融合領域において、医療レギュラトリーサイエンスの知識と技能を最大限に活かしながら活躍できる人材の輩出を行います。

本共同専攻の構成

本専攻は学際専攻であり、その学問分野は生命科学・医学・理工学と多岐にわたる「医療レギュラトリーサイエンス」と呼ばれる新しい分野です。その中に2つの研究部門を設置します。1つは「先端医療機器研究部門」であり、もう1つは「創薬・再生医療研究部門」です。先端医療機器研究部門は「先端治療機器設計・開発評価」「先端治療機器臨床応用・開発評価」「循環器医工学」で構成され、創薬・再生医療研究部門は「組織再生医療」「分子細胞医療」「ナノ医療工学」とそれぞれ3つの研究指導から構成されています。